元素変換002

【発端】
 ことのはじまりは、1989年3月23日ユタ大学の発表でした。朝日新聞では、次のように報じられました。

 英経済紙「ファイナンシャル・タイムズ」が「人類の夢」といわれる核反応を実験室内で起こすことに成功した、と報じた米英の研究者2人が23日、米ユタ州ソルトレイクシティーのユタ大学で記者会見し、「室温で行った簡単な電気化学反応で、百時間以上にわたって大量のエネルギーを発生させることに成功した」など、報道された事実を確認した。しかし、詳細については「論文を専門誌に投稿してあり、受け付けられれば5月にも明らかになる」として、説明をさけた。
 この二人はユタ大化学部長のスタンレー・ポンズ教授と英サウサンプトン大のマルチン・フライシュマン教授。二人によると、実験に使った装置は重水を満たしたフラスコ中に、陰電極としてパラジウム、陽電極としてプラチナを置いただけの簡単なもの。両電極間に電流を流すと、重水中の重水素がパラジウムに吸収され、電流で互いに押しつけられて核融合反応が起きた、という。ポンズ教授は「1立方フィートの海水(約30キログラム)に含まれる重水で石炭なら十トンに相当するエネルギーが発生した」と述べた。

 このときから、机上のビーカーの中で核融合反応が起こる現象は「常温核融合」と呼ばれるようになりました。

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