元素変換003

【常温核融合の特異性】

 核融合とは、原子核と原子核がくっついて融合することです。このような反応は、今までの常識では、ビーカー内で起こせるほど、容易ではありません。
 原子核はプラスの電気を帯びていますから、双方を近づけると互いに反発します。反発力を超える力で強引に近づけていくと、ある一線を超えた直後、両者は引き寄せ合って、くっつき、1つになります。そのときに莫大なエネルギーが生まれます。2つの重水素(D)を融合させる反応のことを
D-D反応といい、この反応がユタ大学の研究室で起きたといいます。

 全ての物質の原子や分子は、絶えず運動しています。その運動を起こしているエネルギー源は「熱」です。空気や水の分子も温度に応じた速度を持っていて、ひしめき合いながら互いにぶつかり合っています。ぶつかり合うとき、温度が低ければ、速度は遅く、核反応が起こる間合いに達する前に弾かれてしまいます。 温度が高ければ、速度は速くなり、核融合を起こすほどに近づく可能性が出てきます。
 このぶつかり合いで核融合を起こそうとしているのが、莫大な国費を投じて研究されている「熱核融合」という技術です。熱で核融合を起こすためには、最低でも8000万度という途方もない温度が必要です。太陽の表面温度の1万倍以上の温度です。安定して核融合を起こすには2億度という温度が必要とされています。
 ちなみに、兵器として開発された「水素爆弾」は、水素の核融合を起こすために、まず、ウランの核分裂を起こし、そこで発生した2億度という温度で水素を加熱し、高速に加速した水素原子をぶつけ合って核融合を起こしています。しかし、この方法では一瞬で全てを破壊してしまうので、平和目的には使えません。

 制御された超高温を作り出すためには、巨大なプラズマ発生炉が必要となり、実験を行うための設備を1つ建設するだけで2000億円もかかっています。 
 熱核融合の研究が始まってすでに80年が経過しています。しかし、その技術で発電所が稼働しはじめたという報告は一度も聞かれません。核融合は、それほど難しい技術だとされているのが一般常識なのです。

 ところが、それを室温でやってのけたというのですから、発見どころの騒ぎではありません。もし本当に反応が起きたのだとすれば、エネルギーの大革命です。フライシュマン、ポンズが行った実験は、中学の理科でやる水の電気分解と全く同じです。それほど簡単な装置で、海水に0.015パーセント含まれる重水4.5グラムから石炭10トンに相当するエネルギーが発生したというのです。
 このような背景があって、ニュースを見た学者等は「きっと何かの間違いだ。にわかに信じがたい。」などとして、批判する者が大多数を占めました。

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